第一の手紙

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[第一の手紙]  昨日は、突然変なことを言って、驚かれたかもしれません。でも、お話を聞いてくださって、そして、お手紙を書くことを許してくださって、ありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。  今日は朝から雨です。雨の日は嫌いだという人が多いのですが、私は、雨が好きです。絶え間なく降り続く雨を見ていると、こんなふうにいろいろなことが過ぎていけばいいのに、と思います。  雨の日は、紫陽花がとてもきれいです。この前は雑草のお話をしました。でも、それと同じくらい、私は、毎日紫陽花の花を見て、その色が昨日とは少し違って見えるのを発見したときに、たまらなくうれしい気持ちになります。ただ、これは今の季節しかできないのですけれども………。  紫陽花の中でも、特に、私は、木陰の薄暗いところに咲いている、がくあじさいというのでしょうか、あの、こんもりと丸まった花ではなく、四つ葉のクローバーのような花が回りに幾つかまばらについている花にひかれます。それは、暗い雨雲の下で、鋭利なナイフか、ガスの炎のように、青白くきらめくのです。  さっき、傘をさしてお庭を散歩していたら、紫陽花の葉の上にカタツムリがいました。そのカタツムリは、ゆっくりゆっくりと葉の表から裏へと進み、そのまましばらく動かずにいて、そのうち違う葉のほうへと進んでいきました。私が、ずっと長い時間そこにそうして立って見ている間、カタツムリには私が見えていたかどうかわかりません。でも、そのカタツムリにとっては、私がそこで見ていようがいまいが、何も関係ないのです。彼は、私にはまったく関心を払わずに、自分の命を生きているのです。
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