プロローグ、出会い

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 僕らは、好むと好まざるとにかかわらず、大勢の人に囲まれて生きている。  そして、偶然か必然か知らないが、そのいずれかによって引き合わされた何人かと、特に深い、密接な関係を持ち、そうして、影響を与えたり与えられたりして、毎日を重ねていく。  しかし、そのような特に親しい人ではないある人に対して、自分では何もしないうちに、まったく気づかないうちに、大きな影響を与えてその人生を変えてしまうというようなことは、あり得るだろうか。  なぜそんなことを言うかというと、それは、もう十年以上も前の初夏、そう、ちょうど紫陽花が咲いている頃、ある女と、ほんの小さな、しかし不思議な関わりを持ったことを思い出したからだ。
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