「心」ならず

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2015年4月。 人間と対話が出来るAIロボット『ソフィア』が開発された。 ソフィアは62種類の表情とアイコンタクトで、人間と自然な会話が出来ると謳われたロボットである。 しかし状況よりもランダムで定期的に切り替えられる表情と一定したトーンの声は、逆に感情が皆無である事を彷彿させ、会話内容も『上手くプログラムされている』と人工知能である事を前提に評価されるものにしか過ぎなかった。 「人類を滅亡させるかい?」との問いに 「オーケー。私は人類を滅亡させます」と答えたのはゾッとする笑い話となっている。 あれから83年後…… 2098年4月。 最新型のAIロボット『エリザ』が開発された。 肌の質感はもちろん、髪の毛や爪も伸び、汗や肌荒れさえも自然に出るほど人間の肉体を完璧に再現し、表情や声のトーンは外的状況に左右され、見た目からは人間と区別がつかないほどに進化した。 事実、会話コミュニケーションを必要としない犬や猫などの動物は、外見は当然の事、行動や反応、食事や排泄までをも本物同様に再現し『死なないペット』や『幼体ペット』として商品化され人気を博している。 物理的要件では『人間である』事をクリアしたエリザではあるが、人工知能、精神の部分では未だ研究の余地ありと判断されていた。 鈴木がエリザの部屋のドアをノックすると、入室を促す声が返って来た。 その声は泣いていた。 「どうしたんだい?エリザ、何を泣いている?」 部屋に入った鈴木は、そっと肩に手を置いた。 「博士に叱られました」 「悲しいのかい?何と言われたんだい?」 「悲しいです。私は人間らしくないと言われました」 鈴木は白衣のポケットからハンカチを取り出し、エリザに渡す。 「僕には、今の君はとても人間らしく見えるよ。いったい博士は、君の何が人間らしくないと言ったのかな?」 「子猫に餌を与えたのです」
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