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第二通りの少し寂れた商店街を右に抜けると坂になった十時路がある。その十字路を真直ぐ進み、古びた宿を横切ると、住宅街に囲まれ、時代に取り残された駄菓子屋が一軒ある。
夕陽に焼かれて、瓦屋根は剥げ落ち、軒先に並べられた駄菓子の品々は減る事を知らず、ラムネだとか牛乳だとかが並んだガラス張りの冷蔵庫が怠そうに立ってある。
奥の曇り引き戸は僅かに開き、中に並べられたテーブルの一角で老人が新聞を読んでいる。
シノコは焼酎のガラス瓶を夕日に輝かせながら、その駄菓子屋の引き戸を足でそっと開けた。
「用事終わったからね」
そう言いながら、シノコが駄菓子屋に入ると、店主の老人は右手だけ上げて返事する。いつもの事だ。
「切符置いとくから」
シノコは言って紺色のスカートのポケットから半切れの切符を取り、檜のレジ台の上に置いた。
暗い梁の上で鼠が鳴いている。
明かりも灯さず、朱色の夕焼けに包まれた店の奥には、土間から場違いのように障子扉が立ってある。
普段は鍵がかかったように開かない扉。
されど、シノコが焼酎片手にその扉へ手を触れると、障子はするすると開いた。
淡くて青い火のような暗い光を揺らしながら。
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