第1章

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「死神退散」         神空寿海  私はねっ。  占いをちょっとやってみただけなのよ。  そう、片思いの彼との相性を占ってみただけ。  満月の夜。ちゃんと専門書に書いてあった通りにやったのよ。  見晴しの良い場所に行って、手書き魔方陣のクロスを広げて、その中心に水晶玉の代用に水を張ったボールを置いて、念を込める様に手をかざして呪文を唱えたわ。  彼とこれから仲良くなれるか聞いたのよ。  「彼との相性、水面に浮かび出よ。」  普通の良くある占い。  そうよ、雑誌でも紹介されている様な占いの筈だったのよ。  でも、出て来たのは全身真っ黒のスーツに黒帽子姿の男。  その男がこう言うの。  「お前の命と引き換えに、どんな願いも叶えてやろう。」  なによ、それ。  ただの相性占いに、命かけるわけ無いぢゃない。  「ありません。お引き取りください。」  断っただけじゃない?  そうしたら、ボールの水面から煙が上がって、今度はグレースーツにグレー帽子の男の人が出て来たのよ。  「お前の体をよこせ。やっとこの世に戻れる。」  そーは行かないじゃない?  「そういう訳には行かないので、お引取りください。」  普通、そうよね?  そうしたら、隣の黒スーツ男がぶつぶつ何かを唱えたと思ったら、大きなカマが出てきて、グレースーツに切りかかったのよ。  「俺の獲物を横取りするんじゃねぇっ」  「頷けさせられなかったお前が悪い。この女は俺がもらう。」  カマを交わしながら、グレースーツがぶつぶつ云うと、えらい大きなドラゴンが出てきたじゃない。  黒スーツとドラゴンが戦い始めたのよ。  この女は俺がもらう?  「ふふっ」  私の奪い合いで戦ってる。  悪い気はしないのよね。 とはいえ、体を取られたり、命を取られたりする訳にも行かない。  「私はどちらの物にもなりません。お引取りください。」  そう言っただけなのに、また、ややこしいのが出てきたのよ。  黒マントを翻しながら現れたと思ったら  「お前の命を食わせろっ。」  それは、うなづけないわ。願い付きの方が良心的じゃない。  グレースーツが黒マントを倒しにかかった。  ああっ私の奪い合い。ちょっとうっとり。  のん気に気分に浸っている場合じゃない。  本を開いて、コイツらを引っ込める呪文を探しても見つからないのよ。  「誰か、助けて。」
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