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「死神退散」
神空寿海
私はねっ。
占いをちょっとやってみただけなのよ。
そう、片思いの彼との相性を占ってみただけ。
満月の夜。ちゃんと専門書に書いてあった通りにやったのよ。
見晴しの良い場所に行って、手書き魔方陣のクロスを広げて、その中心に水晶玉の代用に水を張ったボールを置いて、念を込める様に手をかざして呪文を唱えたわ。
彼とこれから仲良くなれるか聞いたのよ。
「彼との相性、水面に浮かび出よ。」
普通の良くある占い。
そうよ、雑誌でも紹介されている様な占いの筈だったのよ。
でも、出て来たのは全身真っ黒のスーツに黒帽子姿の男。
その男がこう言うの。
「お前の命と引き換えに、どんな願いも叶えてやろう。」
なによ、それ。
ただの相性占いに、命かけるわけ無いぢゃない。
「ありません。お引き取りください。」
断っただけじゃない?
そうしたら、ボールの水面から煙が上がって、今度はグレースーツにグレー帽子の男の人が出て来たのよ。
「お前の体をよこせ。やっとこの世に戻れる。」
そーは行かないじゃない?
「そういう訳には行かないので、お引取りください。」
普通、そうよね?
そうしたら、隣の黒スーツ男がぶつぶつ何かを唱えたと思ったら、大きなカマが出てきて、グレースーツに切りかかったのよ。
「俺の獲物を横取りするんじゃねぇっ」
「頷けさせられなかったお前が悪い。この女は俺がもらう。」
カマを交わしながら、グレースーツがぶつぶつ云うと、えらい大きなドラゴンが出てきたじゃない。
黒スーツとドラゴンが戦い始めたのよ。
この女は俺がもらう?
「ふふっ」
私の奪い合いで戦ってる。
悪い気はしないのよね。
とはいえ、体を取られたり、命を取られたりする訳にも行かない。
「私はどちらの物にもなりません。お引取りください。」
そう言っただけなのに、また、ややこしいのが出てきたのよ。
黒マントを翻しながら現れたと思ったら
「お前の命を食わせろっ。」
それは、うなづけないわ。願い付きの方が良心的じゃない。
グレースーツが黒マントを倒しにかかった。
ああっ私の奪い合い。ちょっとうっとり。
のん気に気分に浸っている場合じゃない。
本を開いて、コイツらを引っ込める呪文を探しても見つからないのよ。
「誰か、助けて。」
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