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俺は二人がかりで押さえこまれ、身体をテーブルに押しつけられていた。逃れようとあがいても指一本動かすことができない。
『誰か、助けて』
必死に叫ぼうとするが、声にならない。俺は絶望に身もだえする。
その時、俺の身体を誰かが揺さぶった。揺さぶられた肩に感覚が戻る。肩から腕、肘、指先へ、そして反対側の手、胴、腰、両脚へと少しずつ身体の感覚が広がっていく。
いつのまにか俺はあおむけに寝そべっていた。身体は暖かく柔らかいものに包まれている。おそるおそる目を開けると、すぐ前に佐緒里の心配そうな顔があった。
自分がベッドに横になっていることに気付く。佐緒里はベッドのすぐ横にしゃがんで俺を覗き込んでいた。彼女が俺を悪夢から目覚めさせてくれたらしい。
「大丈夫? ひどくうなされていたわよ」
俺は上半身を起こし、周りを見回す。自宅の寝室だ。直前に見ていた夢が生々しく、現実に戻るのにしばらく時間がかかった。
「ああ、変な夢を見てしまった」
「ならいいけど」
佐緒里は自分のベッドに戻った。毛布にもぐりこみ、顔だけ出してこちらを見つめている。
「夢の中の俺はカメラマンなんだ。スクープ写真を撮ったんだが、そのためにトラブルになった」
「スクープ写真?」
「矢部総理は……、笑うなよ、実はつるっぱげで、あの七三分けはかつらだったんだ。そのかつらを外したところの写真を撮った」
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