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家族写真
大学に入って知り合った友人の家に遊びに行った。
実家暮らしのリビングに案内されると、いたるところに家族の写真が飾ってある。その理由はもう以前に聞いていた。
友人には弟がいたが、僅か十歳の幼さで、病気でこの世を去ったという。
病気は先天性のもので、医者にも、永くは生きられないと言い渡されていたから、せめて思い出を残そうと、ことあるごとに写真やビデオ映像を撮ってきたという。
だからたくさんの写真を見ても驚きはしなかった。
ただ…。
「弟さんて、亡くなったの、十歳だったっけ?」
「うん。十歳と一ヶ月。もうだいぶ具合が悪くなってたけど、せめてもう一回誕生日を迎えたいって、一生懸命闘病して、その一ヶ月後に……」
「悪い。辛いこと聞いてごめん」
「ううん、いいんだ。こっちこそ湿っぽくなってごめん」
お互い謝り合ったものの、なんとなく空気が気まずくて、俺は再び写真に目を向けた。それと同時に、今確認したことへの疑問が湧いてくる。
友人の弟さんが亡くなったのは十歳の時。なのに、他のご家族の成長や老け具合から換算して、確実にそれ以降のものと思われる写真にも、ずっと弟さんが映り続けているのは何故だろう。
せめて、写真の中でだけでも、ずっと家族一緒という願いを込めて、加工した写真を飾ってあるのかな?
多分そうだよな、きっとそうだよな。…本来、映っちゃいけないモノが映り込んでる写真、とかじゃないよな?
さすがに聞くに聞けないから、俺は勝手にそう信じることにしよう。
家族写真…完
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