第一章「うざくて面倒な男ですよね」

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捜査一課の部屋は、今日は静かだ。 おかげでこんな馬鹿な思考に入り浸れる。 普段は煩いわ騒がしいわで落ち着きがない。 捜査一課は課長も含めて8人。 課長は別室だから、普段はこの部屋に7人いる。 (といっても、しょっちゅう課長がここにいるから8人) 因に、この事務所内には他に、捜査二課、科学捜査課、情報課が置かれている。 一課の部屋は、人数分のデスクが向かい合って中央におかれている。 その上普段は7人がうろうろしているんだから、狭い。 けど、今日は俺と渡部、そして向かいの熊姫……じゃなくて三野さんの3人。 いつもより広く感じる。 俺と渡部は今日は朝から書類整理に追われていた。 三野さんは朝は何処かに行っていたけど、いつの間にか帰ってきていた。 他の四人はそれぞれ二人組で、外に出ている。 近衛さんも朝から庄野……さんと、二人で外に出ている。 近衛さんと二人で。 ……羨ましくて仕方がない。 庄野左千代(しょうの さちよ)。 この人は悪い人じゃない。 悪い人じゃないどころかむしろ聖人並みの性格の良さだ。 けれど、俺からしたらちょっとでいいから死んで欲しい……いや、ちょっと怪我をしたらいいと思う。 庄野さんは、近衛さんの同期。 どうやら気が合うらしく、結構プライベートでの付き合いも深いらしい。 仕事上でも、近衛の右腕なんて呼ばれるほどの関係。 つまり、近衛さんのもはや一部に近い。 ……妬ましい。近衛さんと四六時中ベッタリなんて、羨ましくて死にそうだ。 近衛さんも庄野さんのことを信頼しているから、何かあると二人で行動している。 今日だって、庄野さんをつれていってしまった。 庄野さんじゃなくて、俺を選んで欲しい。 俺が新人の頃は、何かと構ってくれたのに。 あと、俺が新人の時、庄野さんが別の事務所にいた(去年ここに戻ってきた)こともあって、何かと俺と一緒に行動してくれていた。 ……ホント、庄野さんが気にくわない。 近衛さんを好きになって、自分の嫉妬深さを知った。 それが嫌気に拍車をかけている。 あと、何かあるとすぐ近衛さん中心思考が展開するのも嫌だ。 客観を欠く。
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