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男同士の恋愛というのは……というより同性同士の恋愛は、この国ではまだまだ許容されていない。
まだ偏見にさらされている。
残念ながら。
男が男を好きになるのは、でも仕方ないと思う。
むしろ人間は自分と異なる物を排除する傾向にあるんだから、異性を好きになるより同性の方がまだ受け入れやすい……かもしれない。
一言で言うと、男が男を好きになって何が悪い。
生物の理に反しているからNG?
いやいや、動物の世界には同性愛の事例が数多くあるんだぞ。
ペンギンとか。
あの可愛い見た目で、同性愛者が多いんだぞ。
いや、そういう問題じゃないな。
ペンギンも同性愛を育んでいるんだから、俺だって男を好きになっていい……というのは理屈として破綻している。
人類と鳥類を同じ尺度ではかるのははおかしい。
だからといって、ペンギンがOKで俺がダメっていうのも理屈としておかしい。
広い目でみれば、両方とも生物だ。
いや、そういう話じゃなくて……。
「……小出さん、大丈夫ですか?
さっきから天井の隅を凝視したまま固まってましたけど……」
後輩の声で我にかえった。
「……大丈夫」
隣のデスクから心配そうに俺の様子を伺ってくる後輩、渡部奈生(わたべ なお)。
長い黒髪にお嬢様みたいな容姿。
去年この事務所に配属されて以来、ずっと俺が教育係として面倒を見ている。
普段は"大丈夫?"なんて台詞、そのまま返してやるんだが……さっきは流石に大丈夫じゃなかった。
どうして俺はペンギンと人間を比較していたんだ。
全くどうかしている。
渡部は納得したような納得していないような、まさに微妙そうな顔をしていた。
けれど、何も言っては来なかった。
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