お孫さんをください

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パチリと小気味よい音がした。 世界と世界が繋がり、新しい局面が見える。可能性に満ちた音だった。 正確に言えば、牧野の耳にはそう響いた。 将棋盤を見つめていた視線を上げ、老人と対峙する。 「お孫さんをください」 言われた相手は脈絡なく告げられた言葉の意味を考えているようだった。 「…勉強不足で申し訳ない、そういう将棋用語があるんですか?」 「将棋の話ではありませんよ」 庭を濡らす雨音が少し強まる。 「孫をくれと聞こえましたが」 「はい、聞き間違いではないので安心してください」 「そうですか、」と老人は言って手のひらで額を叩いた。 「ははっいやいや、あんな孫でよければ。見た目が派手なもんで常識の無いように思われるんですが、わりとしっかりした女です」 「失礼、涼子ちゃんじゃなくて源くんです」 「源?」 「はい」 乱暴なバイクの音が近づき、遠退く。 「源は男ですよ?」 「女性には見えませんね」 「あーそうか、牧野さんはそうでしたかね。当時は騒がれて大変だったでしょう」
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