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駅のホームで上りの電車を待っている。
イオンで買った、就活生が着ているようなペラペラなブラックスーツ。
色を選ぶのが面倒だからと、いつも同じ黒ネクタイ(これは、マーク・ザッカーバーグを見習っているんだ)。
最近新調した、JINSで買った黒縁のメガネ(ひとつ前のメガネも、全く同じ型番だった)。
美容室で勧められたツーブロックに初めて挑戦した俺は、その髪型のおかげで久しぶりに全容を現した耳に、iPod nanoのイヤホンを装備した。
〈転がる岩、君に朝が降る/ASIAN KUNG-FU GENERATION〉
俺ーー後藤 シンジーーは、毎日と同じ日常の中にいる。
社会人6年目にもなると、頭の3%も使わずに出勤できるようになった。
そして、今日も何も考えていないまま、流されるように電車に乗せられた。
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電車に揺られながら、今朝見た夢の「夢日記」をスマホでつける。
(あれ…?…思い出せない………)
夢のイメージは残っているが、詳細を思い出そうとしても、砂漠に吹いた風のように、サラサラと拐われてしまう。
…自分が何をしていたのかさえ思い出せない。
小さく溜め息をついた俺の「夢日記」一日目の内容は、ただ一言、
『座っていた』
だけだった。
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