第16章 心変わりと変化

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「……アキ」 「ずっと考えてた」 「……」 紫陽花は紫陽花。 薔薇にはなれない。 「俺は男だぞ」 「……」 「キスくらいなら遊びだって言って自分を誤魔化せる。でも」 少し、自分の言葉に笑えた。 もう「誤魔化す」って言葉が出てきた時点で、俺の中の気持ちは形になってるから。 「好きになったところで男の俺を」 今は男の俺を好きだと思っていたとしても、いつか、ノンケのお前が女に戻っていくだろう時に、俺は女にはなれないんだ。 そして、その時に俺は元に戻れないかもしれない。 人の心なんてあやふやで不確かで、ずっと同じ形を保っていられない。 それをお前だってわかっているはずなのに。 「男の、じゃない」 紫陽花は紫陽花。薔薇は薔薇。 「君を、好きになったんだ」 俺は俺。 「それに、君はさっきからずっと俺の心変わりを心配しているみたいだけど」 「……」 「たしかに、人の気持ちなんてずっと同じなんてことはありえないけど、こうは思わない?」 グレンはグレン。 「今、君のことがとても好きだけれど、これはこの前、君と居酒屋へ行った時よりも大きく育っている」 「……」 「そして居酒屋に行った時は、雨の晩、君にキスした時以上に、君のことを好きになっていた。心変わりじゃない変化もあるだろ?」 さっきよりも昨日よりも、俺の頭の中、いや、それだけじゃなく全身がグレンでいっぱいになっていくように。 「どんどん大きくなって、最初はいいなぁ程度だった印象があっという間にここまで育った。植物なら、これ、すごい成長速度だ」 「……」 「だから、すごく困っていたんだ。溢れてしまうって」 会いたくて、今日は日曜で店はやっていないのに、それでも会いたい気持ちがアクアへ向かわせた。 会えなくてもいいから、少しだけ、散歩して発散しようと思ってた。 その途中で俺と酒屋の彼女が歩いているところを見つけた。
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