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世界が、空が、眩しくて眩暈がする。
「バカだろ!」
そう叫んだって、返ってくるのはグレンの嬉しそうな笑い声。
グレンの向こう側は真っ赤な夕陽に染まったオレンジ色、俺の後ろには淡い紫色を混ぜたような薄い青色。その空へ笑い声が高く広く響いていく。
「君に好きになってもらえるなんて……夢みたいだ」
「よかったな」
「とても。君は?」
こんなに空は綺麗な色をしてたんだろうか。こんなに空は丸く高かっただろうか。
「う」
「う?」
グレンの向こう側から俺を照らす陽のオレンジのせいだ。きっと、そう。
「嬉し、かったよ」
こんなに身体の内側から温かいと感じるのは、あの夕陽のせいだ。
ずっと、外を出歩くのは夜ばかりだったから、ずっと、雨だったから、戸惑うほど高い自分の体温はきっと夕陽のせい。
「と、とりあえず」
「うん」
「とりあえず! ここじゃ目立つから!」
こんな道端で、しかも駅からそう遠くないところで、外国人の男が成人男性を抱きかかえてクルクル回ったんだ。
目立たないわけがない。
それでなくてもいつもアクアもあって、自宅マンションもある最寄り駅、いつ誰か知り合いに会うともわからないから、急いでこの場から離れようとする。
「一緒にいてもいい? 君といたい」
「わかったから! ほら!」
今、感じているものを噛み締めているのか、いつもよりものんびりしているように見えるグレンが動き出すのを待っているよりも、俺が勝手に歩き始めたほうがきっと早い。
アクアはすぐそこだ。
店へ、急ぎ足で向かうと、足の長いグレンが少し弾んでいるみたいに、軽い、どこまでも軽い足取りで、満面の笑みで隣を歩いていた。
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