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「お前の周りにあるものは全部、なんでか輝いて見える」
「……」
「魚も花もお前の周りにあると喜んでいるように見えるんだ。だから、目を引くし、つい眺めちまう。モテただろ? お前って」
女が魅力を感じないわけがない。
ホストクラブを経営してるんだ。女がどんな男を好きなのかくらいわかってる。それに関して、しっかりした目を持ってなきゃ店は潰れる。
「顔が良いし、背も高い。花背負って微笑むのが様になってるんだ。相当、良い男じゃねぇと、そんなの浮いて見えるだけ」
「たまに、アキは無意識にすごいことを言うよね」
「は?」
「俺は普通だよ」
「はぁ? どこが!」
どこもかしこも。なんて言って笑ってる。
こんなにカッコよくて、良い声をしていて、長い手足、色気のある手、視線、柔らかくて触ってみたくなる髪、なぞってみたくなる鼻筋。
「どっから見たって、良い」
「君にはそう見えるの?」
「!」
良い男だろって反論しようと思った。
本当に俺にしてみたら女が放っておかないだろう魅力的な男だと思えた。
「それは君が俺のことを好きだから、だろ」
人は自分の望むように見ているものを変換して捉える。
林檎を食いたくない時に林檎を見たって不味そうに見えるが、腹が減って、今すぐにでも林檎を食べたいと思っている奴には極上に美味そうに見える。それと同じ。
「俺、そんなに良い男に見えた?」
「!」
ずっと思っていた。
こんな良い男なんだから、相当女にはモテるはずだ、それなのになんで男の俺なんて? そう思っていた。
これだけ魅力的な男なら女から寄っていく。
それがグレンにとってはつまらないから、なかなか手に入りにくそうな男の俺に興味を持っただけだって。
でも、そうじゃない?
俺がこいつのことを好きだから、魅力的だと感じたから、そう見えていた?
「女に、モテただろ?」
「全然」
「そんなわけねぇ」
ずっと女のほうが放っておかないって思っていた。
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