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雑踏の中、立ち止まる二人を無遠慮な視線が浚っていく。 「…そうだろ…?」 なかなか答えてくれない姉を促すように、陵介は言葉を重ねた。 そんなやり取りをしている間に、何度も信号の色が変わって、夕焼けだった空も薄闇の夜へと姿を変えていく。 街には人工の明かりがポツポツと灯り始めて、二人には不釣り合いな輝きを放った。 「…陵ちゃん、失恋したと思ってる?」 暫く逡巡したあと沙耶香は唐突にそんなことを言った。 その言葉に、心臓が軋んで嫌な音を立てた。 「…聞くな」 「でもあの人…多分陵ちゃんしか見てなかったわ」 陵介の跡を追うようにして、入店していった彼を見た時に。 沙耶香は陵介にだけ向けられた視線に息を飲んだ。 怒気を孕んでいたけれど、真っ直ぐに陵介を射抜く目に、確信したと沙耶香は続けた。 「そんなこと…」 「陵ちゃん、ホントは知ってるんでしょ?彼の気持ち」 「それは…でも」 相沢は、陵介を好きだと言った。何度も、何度も。
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