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◆◆◆
「げ、雨!?マジかっ…痛っ!」
天気予報では、今日が雨だなんて一言も聞いていない。
頬に弾けた雨粒に気を取られて、陵介は痛めている足に誤って重心をかけてしまった。
「陵介、大丈夫?」
隣を歩く彼女が心配そうに、陵介の顔を覗き込む。
その間にも大粒の雨は、地表の色を塗り替えていく。
何分もしないうちに豪雨になりそうな、そんな降り方だ。
「俺、走れねぇから先行ってくれ。風邪ひく」
「でも」
けが人を置いていくことに気が引けるのか、なかなか行こうとしない彼女の背中を押す。
「そこのコンビニに居てくれたらいいから」
「…分かった」
走れば5分の、橋の先に見えるコンビニを指差すと躊躇いながらも彼女は走りだした。
遠ざかっていく背中を見送り、自身も額に腕をかざす。
走れないことが、もどかしくて仕方がない。
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