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陵介は店を出て、ふらふらと歩き出した。
家に帰る気にもなれず、かといって向かう先も、ない。
「…思ったより、しんどいな」
声を出すと、自嘲の笑みがこぼれた。
これでいいと思っていたはずだ。
相沢が幸せになるなら、祝福しようと。
思っていた…はずだった。
「全然、ダメじゃん俺」
相沢には、きっともう会えない。
自分でそうなるように仕向けたくせに、胸のなかはぐしゃぐしゃで。
痛いのか苦しいのか、ほっとしたのか泣きたいのか、なんだかもうよくわからなくなって。
覚束ない足取りに体がふらりと揺れる。
これではまるで酔っぱらいだ。
覚悟はしていたはずなのに、真っ直ぐ歩くことすら危うい。
帰宅ラッシュで駅に向かう人並みにさらわれそうになりながら、なんとか足を動かしている。
そんな状態だった。
「…欲張るのは、よくねぇって…ことか」
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