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忘れることなんて、きっと出来ない。
どうして好きじゃないなんて、言ってしまったんだろう。
自分のついた嘘が、じわじわと胸を侵食する。
「‥っ」
涙が勝手に溢れてきて、視界が白くぼやけていく。
普段は伸びて鬱陶しく思える長くなった前髪も、この時ばかりはあってよかったと思った。
相沢と会って、一緒に過ごして。
陵介を呼ぶ声とか、触り心地のいい髪とか。
臆病なくせに、妙に強引に触れてくることとか。
余裕のないその眼も、怒った時の表情すら。
好きじゃなかったことなんて、多分一度もない。
陵介を選ぶことが、世間から認められることがなくて相沢が辛い想いをするかもしれないと分かっていても。
ただ好きだと、せめて伝えれば良かった。
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