15

7/19
前へ
/414ページ
次へ
さすがに見ていられなくなって声をかけたのだと沙耶香は言った。 それから。 会う場所も時間も悠里さんから聞いていて、陵介を待っていたのだと続けて、沙耶香は少し言いづらそうに、陵介の顔を見上げた。 「陵ちゃんが好きな人って」 「見てたなら…分かったんじゃないのか?」 待っていたと言うのなら、彼女も見ているはずだ。 跡を追ってきたらしい、相沢の姿を。 「やっぱり、あの人だったのね」 「…気持ち悪いだろ」 そんなことを沙耶香が思わないことは分かっていた。晴臣の意中の人間が男だと知ったときも、一度もそんな素振りを見せなかった。 けれど敢えて陵介はそう言った。 「性別とか関係なくなるくらい好きってことでしょ?気持ち悪いなんて思わないわ」 「…んでそんなふうに言うんだよっ!相沢は悠里さんを選んだんだ。それに…俺とどうこうなんて、ならないほうがいいに決まってる」 気持ち悪いと肯定して欲しかった。 今は無理でも、気持ちに整理をつけなくてはいけないから。 だから、この想いのすべてを否定して欲しかった。
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

327人が本棚に入れています
本棚に追加