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さすがに見ていられなくなって声をかけたのだと沙耶香は言った。
それから。
会う場所も時間も悠里さんから聞いていて、陵介を待っていたのだと続けて、沙耶香は少し言いづらそうに、陵介の顔を見上げた。
「陵ちゃんが好きな人って」
「見てたなら…分かったんじゃないのか?」
待っていたと言うのなら、彼女も見ているはずだ。
跡を追ってきたらしい、相沢の姿を。
「やっぱり、あの人だったのね」
「…気持ち悪いだろ」
そんなことを沙耶香が思わないことは分かっていた。晴臣の意中の人間が男だと知ったときも、一度もそんな素振りを見せなかった。
けれど敢えて陵介はそう言った。
「性別とか関係なくなるくらい好きってことでしょ?気持ち悪いなんて思わないわ」
「…んでそんなふうに言うんだよっ!相沢は悠里さんを選んだんだ。それに…俺とどうこうなんて、ならないほうがいいに決まってる」
気持ち悪いと肯定して欲しかった。
今は無理でも、気持ちに整理をつけなくてはいけないから。
だから、この想いのすべてを否定して欲しかった。
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