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陵介は起きる気配のない姉を抱え直して、一歩踏み出した。
「頼むわね。お茶入れておくわ」
リビングに戻っていく紗英の声が、陵介の背中に飛んだ。
二人分の重みで、一歩踏み込む度に階段が軋んだ音を響かせる。
ここに来るのはどれくらいぶりだろうか。
当たり前のように毎日使っていた階段が、やたらと懐かしい気がした。
妙な感慨とともに階段を上がりきると、手前が沙耶香の部屋だった。
幸い扉が少しだけ開いていたので、足で押して室内へと踏み込んだ。
久しぶりに入る姉の部屋だったが、陵介が知っている頃と物の配置が同じだったので、陵介は迷わずベッドに向かった。
そろそろと、沙耶香の体をベッドに横たえると、長い髪が枕に広がった。
「重いわ…寝ちまいやがって」
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