プロローグ

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歩いていても、足元の水はばしゃばしゃと跳ねて、雨にけぶるアスファルトに流れていく。 「くっそ!なんなんだっ」 空に向かって文句を言っても聞き入れてもらえるわけもなく。 足を捻ったのが昨日で。 大学が同じ彼女の、何度目かの告白で折れてしまったのが今日で。 帰り道で、この豪雨。 なんにしてもタイミングは最悪だった。 これ以上はないほど、雨は激しさを増していて、あっという間に辺りに水溜まりを作っていく。 強く打ち付ける水音に、周囲の音も掻き消される。 …これはなんの罰ゲー厶だろう。 気持ちもないのに、彼女を受け入れてしまったからだろうか。 痛む足を引き摺るようにして歩いて、ようやく橋に辿り着く。 顔を上げると、道路を挟んで向こう側に立っている人影に目が止まった。 制服からして、警察官だ。 …なにをしているのだろう。 傘をさしていない後ろ姿が、やけに目を引いた。
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