327人が本棚に入れています
本棚に追加
豪快に笑って、課長は持っていた煙草に火をつけた。
「そんなんじゃないんですけどね。皆ひどいなぁ」
噂の中身をダイレクトに聞くのは初めてで、俺は苦笑を漏らすしかなかった。
「まぁ、噂なんてそんなもんだろ。…お前が大事に思ってればそれでいいことだろ？」
家族を守れるのは自分だけだと、以前課長は俺に言った。
その時はあまりよく理解していなかった言葉も、今はよく分かる。
課長は足早に喫煙室へ入っていき、旨そうに紫煙を吸い込んだ。
俺も課長に続いて喫煙室へ入り、静かにドアを閉めた。
「はい。大事にされてるんで、大事にしてますよ。……もう誰にも悠里みたいな想いをさせたくないんで」
最初のコメントを投稿しよう！