プロローグ

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警官は橋の欄干に手をかけて、景色に溶けこむようにして佇んでいた。 …何か、見てる? 気になって陵介は目を細めた。 歩みも自然に止まる。 彼の視線の先を、辿る。 …家? そこには二階建ての戸建の家があって。 激しい雨に白んで、よくは見えないが…売家の看板がかろうじて見てとれた。 もう一度、警官に視線を戻す。 彼はもうその家を見ていなくて。 俯いて、何かを耐えるようにぐっと拳を握りしめた。 雨が。 激しく降っていて、 景色は白く霞む。 陵介と彼の間には、距離があった。 だから表情なんて、見えるはずないのに。 何故か。 泣いているんだと、そう…思った。
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