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咎めるわけでもなく、ポツンと呟かれた悠里の声に俺は今まで思い続けてきたことを音にして並べた。
「…俺はずっとさ、あの家で悠里と過ごして行くんだって思ってて。悠里が出ていったあとも、ずっと戻りたいと思いながら過ごしてきたんだ」
一人で生きるために、忘れようとしたこと。
でも、どんなに日々の忙しさに身を投じても、忘れることなんて出来なくてずっと。
苦しかったこと。
哀しかったこと。
ずっと。
自分自身が許せなかったことも。
「悠里が好きだったんだよ。大事にしようと思ってた」
「…思ってた、ね……やっぱりもう、過去なんだね」
俺の言葉尻を拾って、悠里は眉を下げて笑った。
「‥ここに来たのはさ、陵介が誰と会ってるのか確かめたかったからなんだよね。…ダメだよねぇ、ホント。警察官なのに」
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