第11章 晩秋のひと時

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「構わないわよ。美幸、どうかしたの?」 「江原さんと喧嘩したの?」  部屋に入るなりストレートに聞いてきた末の妹に、美子は僅かに顔を引き攣らせた。 「……どうしてそんな事を聞くのかしら?」 「美子姉さんが変だから」 「あのね」  あまりの即答っぷりに、思わず項垂れてしまった美子だったが、美幸の断定口調は変わらなかった。 「だって江原さん絡みじゃない事で、そうそう姉さんがキレたり怒ったり暴れたり考え込んだりしないもの。それで、何?」  どうあっても引く気は無さそうな美幸を見て、美子は一つ溜め息を吐いてから、半ば自棄気味に言い出した。 「それじゃあ、ちょっと美幸の意見を聞きたいんだけど」 「うん、何?」 「ある事で江原さんに、ちょっとした借りができてね。心苦しいわけ」 「うんうん、なるほど」  わざとらしく頷いてみせる美幸に美子は内心苛ついたものの、怒りを抑えて話を続けた。 「それでお礼をしたいんだけど、お金は受け取って貰えないと思うし、品物を贈ろうかと思っても、どういう物を選べば良いか、判断が付かなくて困っているのよ」 「ふぅ~ん」 「それで、どうすれば良いか悩んでたんだけど、何か良い考えがある?」 (まさか美幸が提案してくる筈も無いけどね)  相談の形にはなっているものの、正直美幸の回答には全く期待していなかった美子だったが、美幸は事も無げに言ってのけた。 「それなら、美子姉さんからデートに誘って、江原さんの行きたい所にお付き合いすれば良いんじゃないの?」 「え? どういう事?」  全く予想外の事を言われた為に美子が本気で戸惑うと、美幸も不思議そうな顔つきになって話を続けた。 「だって、美子姉さんの方から『どこかに出掛けましょう』なんて誘った事、一度も無いんじゃない?」
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