第1章

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あれから半年後、最後の1人が死んだ。 部屋の中にいた者達の大部分が、各国の政治家や宗教指導者であったにもかかわらず、話し合いが行われる事も無いまま、直ぐに弱肉強食の殺し合いが始まり、食料を求めカニバリズムが始まる。 弱い子供や女性に老人が最初に犠牲になり、続いて私兵に守って貰えなくなった者達が犠牲になった。 部屋の中の住人達が持参していた物の内、ブランド物の服や紙幣や絵はその他の物に比べ役にだったようである。 人肉を焼く火種としてだが。 SがMと行っていた賭とは、約束の地に向けて逃げてきた者達のただ1人でも、飛行機などに積み込んだ荷物を下ろし、代わりに彼らに助けを求める人達を1人でも乗せてきた者がいれば、エリアHに必要な物資を融通しようという賭であったが、そのような行為を行った者は1人もいなかった。 地表では核ミサイルが着弾しなかった場所でも、気流や台風それに汚染された生物の移動により、放射能に汚染されていない場所はなくなっている。 約束の地を目指さなかった者達が籠もる核シェルターが数百カ所あるが、そこに籠もる者達の命が消えるのは時間の問題であろう。 Sは最後の住人の死を確認すると、エリアH(地獄)に細々と送られていたエネルギーを全てカットし、エリアEで使用されるエネルギーも必要最小限に留め、彼は眠りについた。
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