8.エピローグ

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 それもそうだ。晴太は夏樹から直接聞いたわけではない。  たぶん、夏樹も晴太にバレていたなんて知らないだろう。 「夏樹が旭を見詰める視線が、昔、自分が英輝に向ける視線と似てたからね。そうかなって、思ってた」  だから、驚いたのだ。  まさか、夏樹の想いと一緒の物を旭も抱いていたなんてと。晴太は旭も夏樹の事をそんな目で見ていた事は全く気付かなかった。そんな素振り一度も見せていなかったのだ。でも、夏樹に対しての旭の態度は、昔から変わらないなとは思っていた。もしかしたら、出会った時から旭は夏樹の事を好きだったのかもしれない。 「さすが晴ちゃん。俺のママ」  旭はそう言うと、晴太にぎゅっと抱きついた。 「あさひぃーくるしぃ……」  晴太の顔は旭の胸板に当たり、苦しさにもがく。そんな晴太を助けてくれたのは、旭より少しだけ身長が高い英輝だった。 「こら、そんなに強く抱き締めるな」 「あー、英君嫉妬? 息子相手に嫉妬は見苦しいなー」 「なんとでも言え」  そう言って旭から晴太を剥がし、自身の腕に収めた英輝。急に英輝の匂いに包まれて、ドキドキしてしまう晴太は、言葉が少なくなった。 「晴ちゃん。顔真っ赤になってるよ? 英君。この頃仕事忙しいからって晴ちゃんの事ちゃんと愛してあげてないんじゃないの? 晴ちゃん、抱き締められただけでこんな可愛い表情するんだよ。男ならほっとけないでしょ?」 「分かってるならもう部屋に戻れ」 「うわー。ここで始める気だー」 「こ、こら! あさっ……ンンッ!?」  二人の会話に、晴太は色々とツッコミたくなったが、英輝に口を塞がれてしまって声が出なかった。
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