8.エピローグ

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 自分が反対された時、なぜ、自分は男なのだろうと強く思った。  女だったら、こんな風に否定される事はないのに。 「俺は……」  そう、何度も思った事がある。 「晴太……」  英輝の両親にバレたのは偶然だった。それは、英輝が大学に入りたての時で、3人で晴太のアパートに帰る途中の事だった。  一台の車が横で止まり、晴太達の足を止めさせた。その車から降りて来たのは英輝の両親で、英輝と晴太の関係を直ぐに感じ取ってしまったらしく、英輝を連れ戻そうと強引に腕を取り、英輝と晴太を引き離そうとした。  でも、それを英輝は振り払い、晴太との関係を告げ、これからの自分の人生を自由にして欲しいと言ってくれた。でも、それを理解する両親ではなく、呆れた顔で英輝を見ていた。その顔は憤りもあったのを、晴太は今でもハッキリと覚えている。  それに、両親が離れ際に晴太に向かって溜息を吐いていたのも鮮明に覚えている。  それは、自分の息子を誑かしての意味を込めての物だと晴太には分かっていた。  でも、その時の晴太は、英輝の事が好きだから、英輝を信じようと決めたのだった。  あの頃は怖いもの知らずだったと、今になって思う。もし、今、そんな事が起きたら、確実に晴太は英輝の前から旭と共に消えていた。  本当に、あの頃は若かったなと晴太は思う。それは、旭が夏樹と付き合っていると聞いたから思い出す事で、ずっと頭の中に仕舞い込んでいた記憶だった。 「反対なんかしないよ。旭が夏樹と一緒にいて、幸せならそれでいい」  旭が選んだ人なら否定なんかしない。幸い、夏樹の事は昔から知っている。どんな性格で、どんな家庭で育ったのか。そして、旭の事をどれだけ好きかを、晴太は知っていた。 「夏樹が旭の事を好きなのは知ってたし」 「え!? そうなの!?」  旭は晴太のその言葉を聞き、驚いた顔をしていた。それは、英輝もだった。
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