第11章 面倒くさい女

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 途端に満面の笑顔になって勢い良く頷いた篠田に、秀明は苦笑しながら立ち上がり、土産に渡すべくそれをしまってある戸棚に足を向けた。 「全く、ふざけた男だな。こんな迂闊な男が、彼女の従弟とは……」  そしてホクホク顔の篠田を見送って一人になった秀明は、如何にも不愉快そうに酒を飲みつつ、再度書類を眺めた。そして携帯を引き寄せて、美子に電話をかけてみる。しかし相変わらずの反応だった為、すぐに耳から離して静かにテーブルに戻しながら、誰に言うとも無く呟いた。 「相変わらず繋がらないか。あれで、完全にへそを曲げたらしい」  自分の側に非がある事はきちんと認識していた為、秀明は直接美子に文句を言うつもりは無かったが、この間の鬱屈した思いは、真っ直ぐ目の前の不幸な獲物へと向けられる事になった。 「気に入らんな……」  そして何枚かある写真のうち一枚を取り上げた秀明は、憂さ晴らしの様に無言で縦に二つに裂いてから乱暴に丸め、離れた場所にあるゴミ箱に向かって放り投げた。
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