第12章 打ち明け話

2/7
前へ
/142ページ
次へ
 待ち合わせ場所でほぼ一年ぶりに従弟と顔を合わせた時、美子は内心で色々思う事はあっても、それを面には出さずに笑顔で声をかけた。 「お待たせ、俊典君。久しぶりね。元気だった?」  それに相手も同様の笑顔で応える。 「ええ、美子さんも元気そうで何よりです。深美伯母さんの事があったから、心配していたから」 「ありがとう。家の中の事も何とか落ち着いたから、大丈夫よ」 「それは良かった。じゃあ、行きましょうか」  祖父や叔父とは良く似通った顔立ちながら、美子は心の中で(良く言えば貴公子然だけど、確かに気概や迫力に欠けるかもしれないわ。そこら辺が照江叔母さんには、不満で不安なんでしょうね)と、並んで歩きつつ冷静に彼を評した。  そんな事など微塵も想像していない俊典は、そつなく話題を振って時折美子を笑わせながら、予約してあった店に彼女を連れて行った。  「本当は家族全員で、通夜や葬儀にも出向きたかったけど、父が『外戚が大挙して押し掛けたら、昌典の立場を悪くする』とか言って、俺達を同行させなかったから。その……、母さんの話では、精進落としの席で問題が起きたそうだけど、その後、困った事になったりはしていないのかな?」  テーブルに案内されて注文を済ませると、早速俊典が一番聞きたかったらしい内容を口にした。さすがに他家の事情に首を突っ込み過ぎかと、懸念しながら問いかけられた内容に、美子は思わず苦笑しながら頷く。 「それも父や藤宮家の親族達で、上手く取り計らっているから心配要らないわ。余計な騒ぎにしてしまってごめんなさい」 「そうか、それなら良いんだ。やっぱり美子さんは凄いよな。あれから本当に母さんが感心しきりで」  一人で納得した様にうんうんと頷いている俊典を見て、美子の頬が僅かに引き攣った。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

243人が本棚に入れています
本棚に追加