第1章 母との別れ

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「藤宮さん、すみません。通夜と会葬の返礼品の数量について確認したいのですが」 「あ……、はい」 「邪魔になるから、用事は済んだし帰らせて貰う」  慌てて振り返った美子を見た秀明は、短く告げて踵を返した。しかしその背中に、若干焦った様に美子が声をかける。 「あの!」 「何だ?」  足を止めて振り返った秀明だったが、美子自身何故声をかけてしまったのか分からずに狼狽した挙句、変わり映えしない言葉をかけた。 「その……、どうもありがとう」 「……別に、改まって礼を言う程の事じゃない」  そう言ったものの、何やら居心地が悪い様に視線を彷徨わせている彼女を見て、秀明は不思議そうに言葉を返してから再び歩き出した。  そんな短いやり取りの間に門から玄関までの間に受付用のテントが張られ、テーブルや椅子が設置されているのを横目で見ながら、秀明は藤宮邸を後にした。そして塀に沿って歩きながら、以前に深美から言われていた内容を思い出して呟く。 「『会社は昌典さんに、家は美子に任せておけば大丈夫』か……」  そこで足を止めた秀明は、何とも言えない表情で振り返り、門の方を見やる。 「確かにそうだろうが……」  そう呟いて溜め息を吐いてから、秀明は再び最寄駅に向かって歩き始めた。
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