第2章 煩わしい出来事

7/7

243人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
 田野倉がすぐに了承してくれた事で取り敢えず安堵した美子は、葬儀会場である部屋に向かった。  それから定刻通り、通夜と同様に菩提寺の住職と彼より若い副住職によって、つつがなく深美の葬儀が執り行われた。その後無事出棺し、斎場での骨上げも済ませてから再び家に戻り、近親者だけで還骨法要と繰り上げ初七日法要が営まれる。  その後、藤宮家側で人数分の膳を整え、下座の昌典が喪主として列席者に挨拶して精進落としが開催されると、喪主自ら上座の二人の僧侶の元に進み、御礼言上がてら酌を始める。  未成年である美野や美幸は、食欲の無さそうな顔で大人しく膳をつついていたが、美子、美恵、美実は手分けして親族や会社の重役達の席を回り、参列して貰った事に対する感謝の言葉を述べながら酌をしつつ、歓談を始めた。そしてここに至って朝からずっと気を張りつめていた美子も、漸く気持ちに余裕を取り戻してきた。 (幾つかの小さなトラブルは有ったけど、取り敢えず大きな問題はなく進められたわね。後はこの精進落としだけ終わらせれば良いし、気が楽だわ)  そう考えて密かに安堵の溜め息を吐いた美子だったが、その一連の儀式の最後の最後で、最大級の揉め事が勃発する事になった。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

243人が本棚に入れています
本棚に追加