第3章 不心得者への制裁

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「まあまあ、美子ちゃん。本当に大変だったわね。急な事でおばさん、本当に驚いちゃったわ」  何組かの参列者の席を回って、美子が母とは従姉妹に当たる橋田珠子の席にやって来ると、相手がやや大げさに馴れ馴れしく声をかけてきた。それに内心嫌気が差しながらも、それは面には出さずに丁重に礼を述べる。 「この度は一家揃ってお出で頂き、ありがとうございます」  その台詞には若干の嫌味も含まれていたが、生憎な事にそれは相手には通じなかった。 「それは藤宮家の一族としては、当然の事よ。深美も娘を五人も残して、さぞ心残りだったでしょうねぇ」 「そうですね」 (何よ、病院に一度も見舞いに来なかったくせに、如何にも親しげなふりをして、馴れ馴れしくお母さんの名前を呼び捨てにするなんて。しかも年始にも息子連れで来た事なんか無い癖に、急に一家揃って来るなんて、どういう了見よ)  厚かましい物言いの上、朝から余計な手間をかけさせられた事もあって、美子の機嫌は急激に悪化していったが、珠子の猫撫で声での会話が続いた。 「今後藤宮家は、色々と大変よねぇ。伯父様はとっくにお亡くなりになっているし、残っているのは婿養子で入った方と、お嬢さんだけだなんて」 「会社の事も家の事も、特に支障はないかと思いますわ。父は今の所、健康に不安もありませんし」  さらりと流そうとした美子だったが、珠子はさも当然の様に横柄に言い放った。
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