第3章 不心得者への制裁

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「昌典君、話がある。鴫原君と守田君と土井君も少し時間を貰えるか?」  険しい表情の義理の叔父の顔を見て、昌典は瞬時に真顔で応じ、指名された者達も、おおよその用件を悟って素早く立ち上がる。 「はい」 「分かりました」  そこで美子は、冷静に父に向かって申し出た。 「お父さん、それなら南西の座敷を。座卓と座布団を揃えてあるわ。誰か具合が悪くなったり、休憩する可能性もあるかと思ったから。美恵、そちらに人数分のお茶をお出しして」 「準備してくるわ」  そうして旭日食品上層部だけでの密談が開始された後は、室内では和やかな雰囲気で会話が交わされ、無事にお開きの時間を迎える事となった。 「今日は本当に疲れたわ……」  何とかその日の予定を全て終わらせた美子は、居間で睡眠導入剤を飲んでから自室に入り、寝支度を整えて自分のベッドに転がった。そして先程飲んだ物を思い出して、枕元の携帯を引き寄せる。 「役に立ったし、一応お礼のメールを送っておこうかしら?」  殊勝な事を呟きながら片手で操作していた美子だったが、すぐに眠気に抗えずに、深い眠りに落ちていった。  その直後、美子からのメールを受け取った秀明は、『無事終わりました』と記載された件名から本文に視線を移して、軽く首を傾げた。 「『ありがとうございまし』? 最後の『す』を打ち間違えたのか、『ました』と打つところを力尽きたのか……」  真顔で自問自答したのは数秒だけで、秀明は「どちらにしても、ぐっすり眠れそうだな。お疲れ様」と苦笑を浮かべ、次にやるべき事を思い出して、早速行動に移した。  ※※※ 「……と言う事が、昨日の精進落としの席であったのよ。姉さんが追い払わなかったら、私がやっていたわ」 「全くろくでもないわよね、あの一家!! それ相応の報いは受けたけど!」 「美子さんが本当に容赦ないって事と、君達姉妹の結束が予想以上に強固だって事が、今の話で良く分かったな。それで、『それ相応の報い』って?」  翌日の夕食の時間帯。密かに前日のうちに秀明から呼び出しを受けていた美恵と美実は、最寄り駅近くの中華料理店の個室で、丸テーブルを挟んで秀明と淳に向かって前日のトラブルについて洗いざらいぶちまけた。
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