第4章 深美からの手紙

2/9

243人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
「全員集まれって、一体何なの?」  揃って食事をしていた席で美子に言われた美恵達は、食べ終わってから大人しく居間に移動したが、何やら姿を消していた美子が戻って来るなり、美恵が不機嫌そうに文句を言った。その問いかけに対して、美子が手にしている大判の封筒を軽く持ち上げて見せながら、説明を始める。 「お母さんから、皆に手紙を預かっているのよ」 「え?」 「本当!?」 「ええ。余命宣告されてから、こつこつ書き溜めていてね。書いておきたい人、全員に書いたって言ってたわ。それで自分が死んだ後に郵送するなり手渡ししてくれって言われて、今まで預かっていたわけ」 「そうだったの」  驚いた顔になった妹達が納得した所で、美子は若干すまなそうに話を続ける。 「それで幾つかに分けて保管していて、この封筒に入っているのが家族の分なの。落ち着いたら渡そうと思っていたんだけど、せっかくのクリスマスイブに、こういう物を渡す事になってごめんなさい。クリスマス明けに渡そうかとも思ったんだけど、なるべく早い方が良いと思ったから……」 「ううん! お葬式の後も、美子姉さんが片付けとか色々な手続きとかで忙しかったのは分かってるし。寧ろ、クリスマスプレゼントみたいで嬉しいから! そうだよね?」 「別に、いつでも良いわよ」 「大体、何が書かれてあるか、想像付くしね~」 「もう、美恵姉さんも美実姉さんも、そんな事言わないで」  美幸が力強く姉達に同意を求め、彼女達が如何にもな反応を示した事で軽く笑いを誘われながら、美子は封筒を開けて、揃いの白い封書を取り出した。 「それじゃあ、渡すわよ?」  家族への分は簡潔に表に「美幸へ」などと名前を記してあるのみであり、それを見ながら美子は機械的に妹達に封筒を配った。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

243人が本棚に入れています
本棚に追加