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「ねえ、本当に奢り?」
「後からやっぱり割り勘でなんて、情け無い事言わないでよね?」
「勿論だ」
「仮にも社長令息が二人も揃って、そんなケチくさい事を言うか」
四人の女性に囲まれた正輝と剛史は、機嫌良く頷きながら歩道を歩いていた。
「良かった~。皆、ちゃんと聞いたからね?」
「ご馳走になりま~す」
仕事納め前日と言う気忙しい日に、同僚である女性達を引き連れ、周囲からの冷たい視線を物ともせずに定時で勤務先を出た兄弟は、自分達の後ろで声高にお喋りをし始めた女達に聞こえない様に、並んで歩きながら囁き合った。
「調子の良い奴らだな」
「しかしあの優待券がこのタイミングで手に入るとは、俺達にも運が巡って来たんじゃないか?」
「全くだ。あの忌々しい葬式以来、散々だからな。会社の業績が一気に落ちたのは社長一家のせいだと、社内でも視線が冷たいし。今日は目一杯飲んで厄落とししようぜ?」
「同感だ。あのくそ生意気な女共に、今度お仕置きしてやるか」
「それも良いな」
そんな事を言いながら下卑な笑みを浮かべた二人だったが、正輝の身体が横をすり抜けようとした人物と衝突し、勢い良く突き飛ばされた格好で歩道に転がった。
「ってぇ! 何ぶつかってやがんだ!? 気を付けろ!!」
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