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話し込んでいても、前から来る人間を避け損なう程注意力散漫だったつもりでは無かった正輝は、歩道に座り込んだままぶつかって来たと思しき人間を反射的に怒鳴りつけたが、その人物を見上げて固まった。
「ぶつかって来たのはお前の方だ」
「あぁ?」
「気を付けろだぁ?」
「てめぇ、何様のつもりだ?」
「え?」
上下白スーツの茶髪の男は、サングラスの奥の目を不愉快そうに細めただけだったが、彼を囲む様に背後から出て来た体格の良い三人の黒スーツの男達が、忽ち正輝達を威嚇し始めた。それぞれ顔や手に尋常では生じないような傷跡を刻んでいる、そんな堅気の人間とはとても思えない雰囲気の男達が足を踏み出すと同時に、周囲の者達が関わり合いになりたくないとばかりに、一斉に後ずさる。
「い、いえ……、すみませ」
「若に向かって、何ほざいてやがる!! この若造が!!」
「がはっ!!」
「橋田さん!」
真っ青になって詫びを入れようとした正輝だったが、一際上背のある男に容赦なく腹を蹴られて、真横に転がる。それを見てどうやらその集団の中心人物らしい白スーツの男が、淡々と周囲に指示を出した。
「連れていけ。目障りだから、こいつもだな」
「ちょ、ちょっと待っ、ぐふっぅ!」
「きゃあっ!!」
「剛史君!」
流石に兄を見捨てる事も出来ずにおろおろとしているうちに、剛史も殴り倒されて歩道に転がり、周囲から一際高い悲鳴が上がった。そこで漸く連れの彼女達に気付いた様に、男達が揃って目を向ける。
「何だ? 生意気に、こいつらの女か?」
「お嬢さん達、こいつの連れか? それなら一緒に可愛がってやるから、遠慮しないで付いて来な」
左頬を縦に二分割する勢いで付いている切り傷を歪めながら、正輝の襟首を持ち上げて引き摺っている男がニヤリと笑いながら告げると、彼女達は忽ち真っ青になって、彼等との関係性を否定した。
「いえ、無関係です! 偶々帰る方向が同じなだけで!!」
「全っ然関係ありません! 失礼します!」
「待って! 置いてかないで!」
「私も帰る!」
女達がバタバタと我先に駆け去って行くのを見送った男達は、哀れな獲物である正輝と剛史を、酷薄な笑みを浮かべながら見下ろした。
「やれやれ、薄情なこった」
「その分男同士、熱く語れるってわけだよな?」
「そうそう。最近の若造に、礼儀を叩き込んでやろう」
「……文字通り、拳でな」
「ひぃいぃぃっ!!」
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