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「詳細は不明です。ですが一応顔見知りが説明しておかないと、あなたが暴れる必要があると先輩が判断して、俺にお鉢が回ってきました。最初に謝っておきます。誠に申し訳ありません」
そう言って最敬礼した佐竹に、美子は完全に怒り出した。
「あのね! 最敬礼して謝る位なら、年上だろうが目上だろうが、意見して止めさせなさいよ!?」
「もう手遅れです」
「はぁ!?」
頭を上げて断言した佐竹に、美子が尚も文句を言いかけた所で、彼女の背後でワゴン車が急停車したかと思ったらスライドドアが勢い良く開き、生気溢れる男の声が響いた。
「清人、待たせたな!」
「後は宜しく」
「きゃあっ!」
無防備な所を、いきなり両肩を佐竹に押されて美子が背後に倒れ込んだが、思わず悲鳴を上げた美子を、背後から伸びた手ががっしりと捕まえた。
「おう、任された。よっ……と!」
「何するのよっ!」
そして背後から誰かに、そして両足は佐竹に持ち上げられ、瞬く間にワゴン車に乗せられてしまう。
「ちょっと! 離しなさいってば!」
「失礼しました。こちらにどうぞ」
目の前で勢い良くしまったドアの向こうで、再度深々と頭を下げた佐竹の姿があっという間に見えなくなり、美子が乱れた着物の裾を直しながら車の中を見回すと、運転席から陽気な声がかけられた。
「藤宮さんですか? ようこそ、歓迎します。白鳥秀明と愉快な仲間達、会員ナンバー21の富川佳代と」
「会員ナンバー8の篠田光です。初めまして」
誘拐犯と言われても文句は言えない男に、すぐ隣でにっこりとほほ笑まれて、美子は盛大に顔を引き攣らせた。
「『白鳥秀明と愉快な仲間達』って……、ひょっとして以前佐竹さんから聞いた、武道愛好会の事ですか?」
「別名はそうですね。あ、因みにさっき待ち伏せしてた佐竹清人は、会員ナンバー23です」
「富川。武道愛好会の方が、正式名称だ」
「だって堅っ苦しいですよ。愉快な仲間達の方が可愛いじゃないですか」
(薄々思っていたけど……、武道愛好会って、奇人変人の集団?)
無意識に顔を顰めながらバックミラーを眺めていると、運転席から富川が訝しげな声をかけてきた。
「あれ? バックミラー越しにガン見されてる気がしますが、何か私に物申したい事でも?」
「いえ、女性もいらっしゃるとは思っていなかったので」
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