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「悪かったわね、貰ってなくて!! ええ、仲間外れよ。得体の知れない息子もどきだって貰ってるのに!! どう言う事よ、ふざけるんじゃないわ!」
怒りに任せてそう叫んでから、じんわりと両目に涙を浮かべた美子は鼻をすすりながら両目を擦ったが、かなり派手な音が出たにも係わらず、秀明は頬を押さえたりせず平然としたまま、素っ気なく言い返した。
「別に、泣き出すほどの事でも無いだろう。改めて何か言うことが無い位、美子が深美さんの考えを分かってて、信頼されてたって事なんだろうし」
宥めているのか切り捨てているのか分からない口調のそれに、美子は益々苛立ちを募らせながら怒鳴り返す。
「うるさいわね! そんなの当然よ! 妹が四人もいればお母さんだけで手が回る筈もないし、一緒に面倒見てたし、家の事だってしてたし! だからいつも私は後回しで、年上だからって我慢させられてたもの!」
「そういう感覚は、生憎と分からないな。俺は一人っ子だったし」
「薄っぺらい言葉でも、一応分かるって言いなさいよ。この無神経男!」
「悪いな。デリカシー皆無で。うん、お母さんの側で頑張って来たんだよな? 偉い偉い」
小さく笑いながら頭を撫でる様に伸ばしてきた秀明の手を、美子はすかさず払いのけて、再度彼の頬を打った。
「余計ムカつくわ!! もういい、とっとと消えてよ!! 馬鹿ぁぁぁっ!!」
そこでとうとうベッドに突っ伏して盛大に泣き出した美子を眺めた秀明は、何故か少し安堵した様な顔付きになってから、徐に言い出した。
「それで……、さっき言ってた深美さんからの手紙なんだが……」
「……ふぅっ。なっ、何よ? まだ何か嫌味を言うつもり!? どこまで性格悪くて暇人なのよ、あんたはっ!!」
美子は何とかしゃくりあげるのを止めて顔を上げ、秀明を鋭く睨み付けたが、ここで彼は予想外の事を言い出した。
「実は美子宛ての物は、俺が預かっているんだ。ちょっと待ってろ」
「…………え?」
目に涙を浮かべたまま、当惑して固まった美子をその場に放置し、秀明は立ち上がってクローゼットの方に向かった。そしてベッドの上に起き上がった美子が唖然として見守る中、自分の鞄の中から大き目の封筒を取り出し、それを手にしてベッドに戻って来る。
そして元の様に座った秀明が、封筒の中を覗き込んで一通の封書を取り出し、それを美子に向かって差し出した。
「これがそうだ」
「は?」
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