第7章 黒兎の躾

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「どうして美子姉さんが、朝ご飯を作ってるわけ?」 「じゃあ明日は、美実が作ってね。糠漬けと果物を、人数分切ってくれるかしら?」  不審そうな顔で台所に顔を見せた美実に、すかさず美子が用事を言いつける。ここで逆らっては駄目だと瞬時に判断した美実は、大人しく包丁を握って切り始めた。 「え? どうして美子姉さんが……」 「朝から、幽霊を見た様な顔をしないでくれる? もうすぐご飯にするから、お茶碗とお皿と小鉢を人数分揃えてね」  台所の入口で驚愕の表情で固まった美野に、美子は溜め息しか出なかった。そして美野も大人しく手伝い始めると、ひょっこりと美幸が姿を現す。 「あれ? 美子姉さん、昨日帰って来てたの? 予定、聞き間違ったかな……」  首を捻っている美幸に、美子は怒鳴りつけたい気持ちを堪えつつ、押し殺した声で美幸に声をかけた。 「美幸……、ちょっと来なさい。皆、後は良いわ。ご苦労様」  美幸の横をすり抜けて美子が廊下を歩き出すと、彼女は大人しく後ろに付いて歩き出した。そして二人で美子の部屋に入ってから、美幸が不思議そうに尋ねる。 「美子姉さん、何?」  そこで美子はビニール袋に入れて持って帰って来た紙袋を取り出し、美幸に向かって差し出した。、 「これは何?」 「あれ? 使ったの? じゃあやっぱり泊まって来たんだよね?」  きょとんとして尋ね返した美幸に、美子は忽ち怒りの形相になった。 「使ってません!! 大体中学生が、こんな物をどうやって入手したの!? 通販? 今度からあなたに届いた物は、全て開封検品するからそのつもりでいなさい!!」
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