第7章 黒兎の躾

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「えぇ!? それってプライバシーの侵害!」 「お黙りなさい! さっさと質問に答える!!」  盛大に訴えた美幸だったが、美子は問答無用で叱り付けた。それに美幸が堂々と言い返す。 「それはお店で買ったの! 怪しげな所じゃないもの!」 「中学生にこんなのを売るなんて、どんな店よ!」 「だから、ちゃんとした所だし! 店員のお姉さんに『奥手の姉が男の人と初お泊まりなので、男心をくすぐる物を、この予算内で選んで貰えますか?』ってお願いしたら、『まあ! お姉さん思いなのね。分かったわ、大サービスしちゃう』って言ってくれて、随分おまけして貰ったのよ?」  真顔で主張した美幸だったが、ここで美子の顔が盛大に引き攣り、怒りの声を上げた。 「何を馬鹿な事をしてるの! こんなくだらない物に使うなら、暫くお小遣いは無しですからね!!」 「えぇぇぇっ!! 酷い! 美子姉さん、横暴!!」 「黙りなさい!! ご飯にするから、話はもう終わりよっ!」  激怒した美子が足音荒く部屋を出て行くと、この間こそこそと様子を窺っていた美恵達が、入れ替わりに美子の部屋に入って来る。 「うぅ……、酷いよぅ。年始客が来ないから、今度のお正月はお年玉だって貰えないのに……」  項垂れて涙ぐんでいる美幸と、美恵が袋から引っ張り出した物を交互に見ながら、彼女の姉達は溜め息交じりに感想を述べた。 「美幸、気持ちは分かるけど、これは無いと思うわ」 「まだ大人しい奴で良かったわよ。もっと際どいのだったら寒空の下、家から叩き出されてたから」 「しょうがないわね。何か欲しい物があったら、私が買ってあげるわ。姉さんの怒りが治まるまで、少し我慢しなさいね」 「うん……、美恵姉さん、ありがとう」  そうして一気にテンションが下がった美幸を宥めつつ、美恵達は揃って食堂へと向かった。  その日、一家の主たる昌典が食堂に顔を見せると、既に娘達は全員顔を揃え、朝食も揃えられて食べるばかりの状態になっていた。 「お父さん、おはよう。今日はだし巻き卵にしたわよ?」 「……ああ」  いつもと同様にご飯茶碗や汁椀を目の前に揃える美子を、席に着いた昌典は何とも言い難い顔付きで見上げる。 「その……、美子?」 「何?」  不思議そうに尋ね返した美子に、昌典は何か言いかけようとして、結局いつもと同じ台詞を口にした。 「いや……、何でもない。じゃあ食べるか」 「はい。いただきます」
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