第7章 黒兎の躾

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 バサバサと便箋を捲っても、他に書いてあるものは見当たらず、そもそも最後に日付と署名がある事から、そこで終わりだと明白になっている事で、美子は半ば呆然となった。 「殆ど……、と言うか、全部あいつに関する事じゃない。何なのよ、これ。本当に私宛?」  納得いかない顔付きで黙り込んだ後、美子は不意に表情を緩めて、吹っ切れた様に小さく笑った。 「まあ、良いわ。でも三白眼の黒兎って……」  そう呟いて「ぷふっ」と小さく噴き出した美子は、笑いを堪えながら携帯電話を手に取った。 「せっかくだから、登録名を『黒兎』にしちゃいましょう」  そう言って秀明の登録名を訂正した美子は、これで着信がある度に笑えるだろうなと思いながら、「これで良し」と満足げに呟いた。
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