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三が日を過ぎても、まだ世間一般的にはお正月気分が抜けきらない時期。美子が自宅で義理の叔母の急な訪問を受けたのは、そんな日の昼下がりだった。
「照江叔母さん、いらっしゃいませ」
「美子ちゃん。急に押しかけしまってごめんなさい」
「私は構いませんが、まだ一応松の内ですし、そちらの方がお忙しいのでは?」
「そうなんだけど、急にぽっかり時間が空いてね。なるべく早めに直接美子ちゃんと顔を合わせて、話したい事が有ったものだから」
「はぁ……」
(電話で済まない話って事? 一体、何事かしら?)
きちんと着物を着こなした彼女は、この時期は単独か叔父と一緒に後援会の新年会や年始回りで多忙ではと、美子が不思議に思いながらお茶を出すと、照江は早速真顔で話を切り出した。
「あのね、時間もあまりないし単刀直入に聞くけど、うちの俊典の事をどう思う?」
「え? 俊典君、ですか?」
「ええ、そう」
(いきなりそんな事を言われても……)
照江と和典の長男であり一つ年下の彼とは、子供の頃はそれなりに顔を合わせて遊んだりもしたが、成人してからは主に冠婚葬祭などの親戚付き合いがある時に顔を合わせる程度であり、美子は取り敢えず彼に関して認識している内容を、慎重に考えながら口にしてみた。
「そうですね……。俊典君は常に物事に対して慎重で、周囲の人を立てる事ができて、自分の意見と異なる内容でも素直に受け止められる、包容力のある人間だと思いますが?」
「良く言えばそうだけど、悪く言えば優柔不断で、自己主張できなくて、周りの意見に流されやすいとも言えるわね」
「叔母さん……」
(そんな身も蓋も無い事を言われても)
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