第9章 予想外の話

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「どうもこうも……。滅多に無い分、時々姉さんの無神経さには、どうしようもない位、腹が立つわね」 「ここは、知らなかった事にする?」 「馬鹿な事を言わないで! そんな事をしたら、後が怖過ぎるわよ!」  美恵が盛大に反論すると、美実は姉の肩に片手を置きながら、真顔で申し出た。 「そうよね。じゃあそう言う事だから、年長者として連絡宜しく」 「ちょっ……、冗談じゃないわよ! せっかくあれの親友と付き合ってるんだから、あんたが男を介してチクれば良いでしょ!?」  慌てて自分の肩からその手を払いのけつつ美恵が訴えたが、美実も必死の形相で言い返した。 「それこそ冗談じゃないわ! 淳を殺す気!?」  それから暫くの間、姉妹の間で激しい論争が繰り広げられたが、結局は「付き合いが長い方が、回避方法も熟知している筈」との結論に達し、一方的に淳に嫌な任務を押し付ける事になった。 「……それで?」  悪友からの電話に出た秀明は、相手の話を一通り聞いてから、短く、静かに問いかけた。それを聞いて、かなり危険な物を感じ取ったのか、電話の向こうから淳が、躊躇いがちに話を続ける。 「だから……、今の話をサクッと纏めるとだな……、近々美子さんが、従兄弟の一人と食事に行くって事なんだが……」 「上手く纏めたな。さすがだ、淳」 「は、はは……。そりゃどうも……」  穏やかな口調で褒め言葉を口にした秀明だったが、その顔から表情が綺麗に消え去っている事に、電話の向こうでも淳には分かっていたらしく、緊張を孕んだ掠れ気味の声が伝わる。 「良く分かった。じゃあな」  そこで話は終わったとばかりに秀明が声をかけると、淳が焦った声で言い聞かせてきた。 「あ、おい、ちょっと待て! あまり変な事はするなよ? 一応彼女とは血が繋がってる従兄弟で、倉田代議士の長男なんだからな!?」 「それ位分かっている。一々喚くな。切るぞ?」  淡々と言い返して通話を終わらせた秀明は、そこではっきりと面白く無さそうな顔付きになって吐き捨てた。 「前々から、父方に目障りな奴が何人か居たが……。美子にどうこう言う前に、この機会に目障りな奴らを一掃する為のネタでも集めておくか」  そう呟いた秀明は早速時間を無駄にせず、とある旧知の人物の電話番号を選択して電話をかけ始めた。 「光? 今大丈夫か?」 「はい、大丈夫です。どうしたんですか? 白鳥先輩」
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