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「大丈夫…まだ大丈夫。」と思った以上に溜めこんでいたのかもしれない。過ぎていく時間にも気が付かないほど話に夢中になり、時刻はもうすでに昼を過ぎていた。お互いに今日の予定も帰る時間も気にしていない二人には、カフェの店内に飾られている時計の針がどの数字を指していようと全く気にはならなかった。
運ばれてきてから一度も口にせずに冷めきってしまったココアをすすりながら、メグミが言った。
愛
「……彼氏とか、いないの?」
「やっぱりきたか、その質問。」と言わんばかりに呆れた顔を見せる椿は首を横に振ってその質問を否定文で返した。
椿
「いない。」
愛
「……興味なさそうだもんね。」
椿
「うん。」
愛
「じゃあさ……好きな人は?」
「どうする?話す?やめとく?」心の中で合同会議を開き、メグミに打ち明けようか迷う椿は「さすがにまだ早いだろう」と思い留まりさり気なく嘘をついた。
椿
「…………いない、よ。」
愛
「はい、それ絶対いる。」
・・・ヤバい、多分こいつにウソは通用しない。
椿
「……好きかどうかもわからないもん。」
愛
「最初はみんなそんなもんでしょ?」
椿
「てか好き……になっちゃ、いけないしね。」
愛
「……っ?!」
椿が言った言葉に驚き、口に入れたココアを吹き出しそうになったメグミが慌てて口を手で覆った。
愛
「あ……っぶな!あんたの顔面ココアだらけにするとこだったわ!」
椿
「………。」
愛
「なんだ、あんたも愛人だったの。」
椿
「……いやぁ、もっと罪が重い……かも。」
愛
「……!!」
その言葉はメグミの好奇心を誘うには充分過ぎる程で、あからさまに話の続きを聞きたそうにメグミは目をまんまるにして椿を見つめた。
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