ゲーム開始

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ゲーム開始

 札束の山と、3丁の拳銃。姉は一体何者なのか?  最近は反目し合っているが、子供の頃はおままごとや鬼ごっこをして遊んだ。  意外なくらいあっさりと金庫が開いたのも気になる。鳴神の虚ろな目が美冬を見ていた。  とんでもない粘着野郎だったのか?  あっ、粘着ってのはスラングでストーカーのことなのだが。   そのとき、鳴神のスマホが鳴り出した。着メロがレットイットゴーだったので、思わず笑った。  オッサンのクセにアナ雪かよ? 「もしもし?」 《ゲームは楽しんでもらえた?美冬さん》  相手は加虐的にケラケラと笑っている。背筋が凍りつくのを感じた。ボイスレコンジャーで、甲高い女の声に変えてあるせいか、魔女を思わせる。 「あんた、誰!?姉貴に何かあったら殺すわよ!」 《強情だねぇ?嫌いじゃないけど、クックックッ》  喉の奥から笑う人間は、サディスティックなタイプが多い。 《キャッ!やめてよ!何するのよ!?》  姉貴の悲鳴に泣き出しそうになる。 「姉貴!おい!ふざけんなよ!?」 《こっちは君のためにやってるんだけどな?鳴神も、この女もあんたの敵じゃないか?本当は楽しんでるんだろ?あんたの正体バラしてもいいんだよ?》  暗い湖の底から突き出た、2本の足を思い出し、美冬は吐き気を催した。  本当は、姉の生死なんかどうでもいいのかも知れない。泡がブクブク立ち、血で赤緑に濁る湖。 《僕と一緒にこの世からブラック企業を葬ろうよ?これは犯罪じゃない。僕たちは正義だ。君は何色が好きだい?赤?青?緑?…僕は白が好きだよ。黒に勝てるのは白しかないんだよ?君も白が好きだろ?》  ここで「青」と答えたらどうなるのだろう? 「そうね、いい色よね?」 《そうだろ?僕たちは生まれる前から繋がっていたのかも知れないな?それじゃあ、早速任務についてもらおうかな?bossを倒すにはスライムと戦わないとな?》  ドラクエかよ?こいつは人を殺すことに何の感情も抱いてない。私のことも簡単に殺すに違いない。    日村太と月島玲音は、排水路を南東の方角に歩いていた。2人はウェットスーツ、ボンベ、潜水マスクに身を包んでいる。 「スーパーマーズって知ってる?」と、日村。 「火星が地球に急接近する、あれだろ?」 「火星人がいるのかな?レオ、何か音がしない?」 「天体とか興味ないし」  ピコン、ピコン、ピコン…。
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