網代の正体

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網代の正体

 爆弾を解除したものの、桝柿は私に冷たかった。「宇佐美君、もう少し早く解除できなかったのか?鳴神さんにもしものことがあったら…」 「解決したんだ、それでいいでしょ?」 「何だね?その態度は!」  速度より慎重さが優先されるべきだと思うが?  頭にきて、ゴミ箱を蹴飛ばした! 「やってらんねぇよ!」 「自分は東武署の桝柿だ!」 「知ってるよ!自己紹介どうもね?」  桝柿は自分の頭を撫でた。 「桝ちゃん、エライエライ」    私は東武署2階にある休憩室にやってきた。  午後の珈琲っちゅう、イミフな缶コーヒーを飲んだ。午前中に飲むと腹を下すっちゅう都市伝説は…ありません。有馬温泉に行きたいなぁ。  窓の外には釜川が見えた。《み》って看板の建物が見える。一体、何の建物だろうか?  どれみ?きっと、《ど》の館とか《れ》の館があるのかもしれない。  網代刑事が入ってきた。財務捜査官っちゅう民間採用組だ。 「あまり、気を落とさないでくださいな」  網代はタバコをくわえた。プチッと吸い口を押している。もう何年も吸ってないな。 「すみません。それ何です?」 「あぁ、これ押すとメンソールの薫りがするのよ」  網代は、近藤正臣をさらにシャープにさせた狐を彷彿とさせる男だ。銀縁の眼鏡がトレードマークだが、今はかけていない。 『武市ィ』って、悪そうな殿様が印象的でしたな? 「龍馬伝に出てました?」 「福山雅治です。アンちゃん、ウシシッ」と、《一つ屋根の下》のキャラの真似をする。  缶を真上から見ると、鼠の顔みたく見えるのは私だけだろうか?  この宇佐美という男はまだ28歳だという。  いわゆる、ゆとり世代にあてはまるのだろうが、悪いのは彼らではなく、右往左往させてしまう政財界と教育界だ。 「私は61になるんですがねぇ、昔の都庁は有楽町にあったんですよ?」 「新宿じゃなかったんですか?なるほど、網代さんは都庁の住人ですか?」 「まぁ、そんなもんです。私の先輩に藤堂さんって、雲の上の存在の人がいましてね?」  私は男体山の上にモクモクと沸く雲を見上げた。
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