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自分は東武署の獄門だ!
東武警察署 3F 署長室
「署長、あの桝柿って課長なんなんすか?」
中鉢刑事が今にも噛みつきそうな声で怒鳴る。
「クロからも何か言ってやれ」
彼は元白バイ隊員で、黒豹OBの私をクロと呼ぶ。
ソファにどっかり座る獄門署長は、昼間から缶ビールを飲んでいる。キリンビールをラッパ飲みし、ゲブッとゲップをした。
「君たちもどうかね?」
屋上で拳銃自殺した豚瀬の後任として、彼が着任した。本庁からやってきた刑事で、豚瀬の汚職を暴いたのも獄門である。
「勤務中ですので」と、私は丁重に断った。
獄門はビールを飲み干し、缶を片手で潰すとゴミ箱に放り投げた。ホールインワン!
一昨日の出来事だが、中鉢は、仕事がノロイっちゅう理由で桝柿から殴られた。
頬の腫れがまだ引かないようで、時折氷嚢を押し当てる。
「彼女から、あしたのジョーみたいだって笑われたんだぜ?桝柿の野郎!」
「君、仮にも桝柿は上司だぞ?野郎呼ばわりは許さん!自分は東武署の獄門だ!」
「知ってますって」
私は苦笑した。自己アピールが好きだな?桝柿にしても、獄門にしても。
「自分は東武署の獄門だ!」
「バグってるのか?」
「自分は東武署の獄門だ!」
「もうやめてくれ、腹が痛い」
横隔膜がピクピクする。獄門はコンピューターで動いている。
中鉢が獄門の顔面にライダーキックを見舞う。
「ダァァァァァァァァッ!!」
翌朝、宇佐美と桝柿の2人は横浜にやってきた。
港エリアに篠田由紀が現れたと連絡があった。
由紀は失踪した派遣社員の1人だ。
東武地区にある派遣会社から、真岡にある薬品工場に派遣されていた。
「何でよりにもよって、おまえと組まなきゃいけないんだ?」
ホワイト族の桝柿は、ブラック族の宇佐美をジロリと見た。汗を掻くのは嫌いだ。
「そりゃあ、こっちのセリフですよ」
宇佐美は舌打ちをした。Pホンにメールが届いた。茨城に出張中の富田からだった。
《鹿嶋エリアに怪しげな基地を発見。メタルギアを発見した。snakeたちと合流》
富田は大のゲーマーだ。《メタルギア3》をわずか2日でクリアしてしまった。
写メが送られてきた。メタルギアRAYを思わせるブラックカラーのロボが燦然と立っていた。
「日立の奴、何を企んでやがる?」
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