第2章 準備と基礎知識の確認

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「本当に辛辣だな。俺としては公爵様がトチ狂って、こっちに手を出して来ない事を祈るね」 「勿論、こちらから率先して事を構えるつもりは無い。相手の出方次第だ。俺はれっきとした平和主義者だからな」 「……平和主義者って言葉が泣くぞ」  本格的にうんざりしながら軽く首を振った一成は、ここで会話を切り上げて襖を閉めて姿を消した。そして用紙を入れ替え、再び筆を取り上げた基樹は、目の前に広がる白い和紙を見下ろしながら、誰に言うとも無く呟く。 「向こうには向こうの事情があるかもしれんが、こちらも守り抜かなければならない物があるからな」  取り上げて用紙の上に持って来たものの、基樹がそのまま空中で静止させていた筆から、少ししてから一滴墨汁が滴り落ちた。その白い空間にできた不吉な黒い染みを見ながら、基樹は更に暫くの間、何やら考え込んでいた。
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