第3章 不協和音

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 終業式を終えて、いつもよりはるかに早い時間に下校した藍里達は、まっすぐ来住本家に足を向けた。すると当主である基樹は留守で、一成の出迎えを受ける。 「やあ、藍里。頼まれた物はできているよ」 「ありがとう、一成さん」 「じゃあちょっと、奥に来てくれるかな?」 「分かったわ」  玄関に上がるなり言われた内容に、素直に頷いて後に続いた藍里だったが、何気なく同行しようとしたルーカスに、背後を振り返った一成が、横の居間を指差しながら申し出た。 「ああ、申し訳ありませんが、殿下はこちらで少々お待ち下さい」 「え?」  当惑したルーカスだったが、一成はにこりと人好きする笑顔を浮かべながら、尚も説明を続ける。 「同じ屋敷内に居ますから、襲撃時に多少離れていても、すぐ対応できるでしょう。今度の物はなるべく人目に触れない様にして、皆さんを驚かせたいんですよ」 「いや、しかし。実際どんな武器を所持しているか分からないと、咄嗟の判断に影響が」 「勿論、そんな不測の事態にならない様に、殿下を初めとする護衛の皆さんが、しっかりその役目を果たしてくれると信じておりますので、今日渡すものも無用の長物になりそうですから、一々ひけらかすのが恥ずかしいと言うのが本当の所なのですが」 「それは……」  そこまで言われて強く出る事もできずにルーカスが口ごもると、一成は笑顔を保ったまま藍里を奥へと促した。 「じゃあ藍里、行くよ」 「あ、ちょっと待って」
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